ホエイ豚2頭の肥育を先月始めた高秀牧場(いすみ市須賀谷)が11月11日、エコフィードの取り組みとして、不要な柿の募集を始めた。
ホエイ豚の放牧地の隣にはナバナ畑が広がる。春には菜の花畑が広がる
約200頭の乳牛を飼育している同牧場。敷地内にはチーズ工房とミルク工房を構え、搾りたての牛乳からできるチーズやジェラートを販売している。チーズ職人の大倉典之さんは「チーズを作る過程で大量のホエイ(乳清)が出る。一般的なチーズ工房では、ホエイを活用できずに廃棄することが多い。当工房ではリコッタチーズやブラウンチーズ、ジャムなどに加工することで付加価値を付けて活用してきたが、その全てを処理することはできず、残りは全て子牛に飲ませていた。ただ、1頭当たり1日10リットルの消費が限界。加工品の製造にも限界があり、環境に負荷をかけず、人の手間もかけず、よりよい活用方法がないか考える中で『ホエイ豚』を考えた」と話す。
ホエイ豚はホエイを飲ませ育てた豚で、肉質が柔らかく脂身が甘くジューシーさが特徴。北海道ではブランド化が進んでいる。大倉さんは「牧場内に敷地があったので放牧で豚を育てられないか」と考え、既にホエイ豚に取り組んでいる牧場を視察。家畜保健所に相談し豚を仕入れる養豚場、食肉処理場にも掛け合い、10月7日、2頭の豚を迎え入れた。
「高秀牧場には牛のプロはいるが、豚に詳しい人はいなかった。自分を含めスタッフと共に日々勉強し、多くの人に助けてもらえいながら育てている」と大倉さん。
現在、チーズ工房から出るホエイを飼料として与えているが、エコフィードの取り組みも進めている。エコフィードは、食料品製造副産物や余剰食品などを飼料として活用する取り組みで、畜産飼料のコストや食品ロスの削減から注目されている。
大倉さんは「想像していた以上の食欲に驚いている。余ってしまい困っていたホエイが足りなくなるとは思わなかった。今の時期、たわわに実る柿の木を多く見かけるが、気がつくと収穫されず落ちていた。もったいないのでホエイ豚に食べてもらえたらと呼びかけを始めた」と話す。
豚は多くの場合、生後6カ月、110キロ程度で出荷される。同牧場のホエイ豚の初出荷は2月ごろを予定。食肉処理後、県内の加工業者と一緒にベーコンやソーセージに加工するという。「豚肉でさまざまな加工品ができるが、チーズと組み合わせることでさらに商品の幅が広がる。希少部位は、市内のオーベルジュの料理人が引き取り、調理してくれる。骨はラーメン店がスープの仕込み用で引き取ってくれることになった。人のつながりで、余すことなく活用できる」という。
「豚が来たことで、今まで解決できなかったことがクリアになった。豚は食を支える大事な畜産だと改めて気づくこともできた。ホエイ豚をきっかけに、多くのつながりで生まれる循環型社会の取り組みに広がっていけば」と期待を込める。
柿の持ち込みは9時から17時まで、チーズ工房で受け付ける。