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いすみで学校給食用野菜をシェア SNSでつながり、ロスを削減

訪れた人は畑に残ったタマネギを自ら収穫し、持ち帰った

訪れた人は畑に残ったタマネギを自ら収穫し、持ち帰った

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 学校給食で使われず廃棄されてしまうはずだった野菜のシェア会が5月29日、「いすみっこ給食野菜畑」(いすみ市松丸)で開かれた。

「スーパーランドいすみ店」では生産者の写真も掲示し販売(写真提供=ちまちファーム)

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 2012年ごろから自然との共生や生物多様性のまちづくりを進めるいすみ市は、有機農業の普及に取り組んでいる。「子どもたちにおいしい給食を」との思いから、2017(平成29)年に市内の学校給食で地元産有機米の使用を開始。地元野菜の提供も進め、「いすみそだち」としてブランド化も進めている。

 現在、学校給食に野菜を提供している農家は6軒。タマネギやニンジンなどの野菜を納品しているが、規格が細かく定められており、実際の給食で使われる野菜は全体の2割ほどだという。

 学校給食野菜生産グループの中で最大級の農場を管理する宮川聰さん、宏子さんの畑でも、規格に合わず納品できなかったタマネギが畑にたくさん残った。

 同グループ「ちまちファーム」の清水京子さんは、「タマネギの場合は8センチ以上が必要で、それ以外のサイズは納品できない。直売所などに出荷するにも、収穫から、梱包(こんぽう)、納品までの手間がかかるので、できた野菜全てを消費者に届けるのは実は難しい」と話す。

 「新たな野菜作りのため、タマネギ畑を耕さなければいけなくなったと、宮川さんと話をしていた時に、もったいないと思った。収穫しきれなかった作物は、耕し、土に還(かえ)すことがほとんどだが、多くのタマネギが残っていたため、欲しい人に向けてSNSで呼びかけては、と思った」と清水さん。

 「ちょうど、有志で立ち上げたSNSのコミュニティーがあった。そこでは、農家と消費者が直接つながり、規格外で出荷ができなかった野菜をシェアしていた。少しでも必要としている人のところへ届き、農家を支えるきっかけになればと考えた」とも。

 当日は朝から長靴や軍手、かごを持った人が訪れ、思い思いにタマネギを収穫した。小さい子どもと共に親子で参加する人もいた。料金は、収穫量に応じて宮川さんに支払った。

 近くに住む40代女性は「立派なタマネギ。規格外というだけで食べずに土に還(かえ)してしまうのはもったいない」と話していた。

 市内のスーパー「スーパーランドいすみ店」の店長も訪れ、取り組みや現状について熱心に話を聞いた後、自ら収穫を行い、150キロを仕入れ、夕方には学校給食の取り組み案内とともに店頭で販売した。

 ちまちファームの高原和江さんは「突然の呼びかけにもかかわらず、多くの人の協力で延べ40人もの人が来て、200キロものタマネギが収穫されていった。野菜ロスの削減はもちろん、実際に畑を訪れることで、農業や学校給食のことを知る機会になったのでは。多くの人が共感し支援や協力をしてくれてうれしい」と振り返る。

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