イセエビ漁が8月1日、いすみ市の大原漁港・太東漁港・岩船漁港で解禁された。
大原漁港に停泊する船。今年は48隻が解禁日初日に出港した(写真提供=山口高幸さん)
同市近郊の漁場ではイセエビ漁が盛ん。毎年6~7月の禁漁期間を経て、8月1日に一斉に解禁する。イセエビ漁の解禁は全国で千葉県が一番早く、水揚げされたイセエビは、東京・豊洲市場のほか、伊勢や高知など関西エリアにも送られる。
日本屈指の漁獲量を誇る大原漁港では、解禁日初日に48隻が出港。卯栄丸の荘司雄一船長は「年間を通してたった2カ月の禁漁期間だが、毎年、解禁日は楽しみ」と話す。
1日は、それぞれ船に乗り込み海上で待機後、13時の伊勢海老船団の団長の号令で目指す漁場に向かって一斉に出港した。水温は26度で海水は多少の濁りはあったものの、潮流は穏やかだったため、「イセエビが生息しているならば好条件」だったという。
2日深夜2時に網の引き上げを開始。今までにない数のイセエビが網にかっていたため、網からイセエビを外すのに時間と人手が取られたという。陸に上がった後、次の漁に向け網から海藻など余分なものを取り除く作業が行われるが、作業を手伝っている人からは、「今までで一番捕れたのではないか」「良いスタート」などの声が聞かれた。
夷隅東部漁業協同組合には、大原漁港のほか、太東漁港、岩船漁港が所属する。初日はどの漁港も大漁で水揚げ量は、昨年約 445キログラムだったところ、今年は過去最高の約4300キログラムだった。「初日からこんなにもたくさん捕れてうれしい。ただ、次も同じように取れるのかというと複雑な心境」と荘司さん。
予想外の水揚げ量に、いけすなどの設備のキャパシティーを超えてしまったことや、市場の休みも控えていることから、翌日の漁は急きょ見送られた。イセエビ漁において全船での出漁が見送られたのは今回が初めて。
漁師歴45年の拓永丸の中村享船長は「長年漁師をやってきてこれほど多く捕れたのは初めて。良い条件が重なっての結果だと思うが、値崩れなど心配な事もある。ここ数年は、お盆前は余り多く捕れなかったが、今年は解禁から経験したことの無い大漁だった。大原漁港沖の海も、昔とはずいぶん変わってきてしまった」と話す。
いすみ市水産商工観光課山口高幸さんは「ここ近年、漁港と一緒にさまざまな取り組みを進めている。資源の確保や鮮度や品質の担保など、多くの漁業者と共に新しいことに挑戦してきた。今回、漁が見送りになった背景として、価格の安定や鮮度の確保、資源を大事にする視点からも必要な措置との動きがあったのでは。さまざまな情報を得て工夫しながら共有し、これからも漁業と向き合っていけたら」と話す。
イセエビ漁は5日に再開され、組合が休みの日曜を除き、海の状況を見て毎日行う。