ロングビーチの潮風を受けて走る「おんじゅくオーシャントレイル」が3月17日、御宿中央海岸周辺で開催された。
交流スペース「かぐや」で活動する「かぐやメイト」のメンバーと地元の踊り仲間。共に練習をしてきた大会スタッフも
同イベントは「月の沙漠記念館」前をスタートし、全長2キロのロングビーチ含むコースを走るレース。今年で11回目を迎える。コースは、初めてトレイルランに参加する人もチャレンジしやすい15キロと5キロがあり、今年は480人がエントリーした。
当日は風速10メートル近い強風が吹き荒れ一部コースの変更などもあったが、9時40分より開会式が行われた。準備体操ではランナーと地元の人が一緒になって「房州御宿音頭」を踊った。
房州御宿音頭は、正確な時期は不明だが昭和中期ごろ同町で生まれた踊り。 岩和田地域で当時活躍した海女の恋歌として広まった。現在女性の海女がおらず踊る機会も減っていたが、2年ほど前に交流スペース「かぐや」を拠点にまちづくりに取り組む団体「かぐやメイト」のメンバーが「皆で楽しめて体を動かせるようなものはないか」と考えた時、かつて地域で踊られていた「房州御宿音頭」を思い出したという。
踊れる人はたった一人だけだったが、同団体メンバー4人全員で覚えた後、「御宿の歴史・文化を自分たちなりに楽しんで多くの人に共有したい」と思い、踊りを広める活動を始めた。
当時、同町地域おこし協力隊で活動を共に行ってきた行木千賀さんは「地域の文化に興味があったので『房州御宿音頭』を知った時、踊りを通して海女文化を残していきたいと思った。地域のイベントや祭りなどで披露していく中で興味を持つ人が増え、一緒に踊る仲間が増えている。房州御宿音頭が、地域で集まる一つのきっかけになっているのでは」と話す。
今回の「おんじゅくオーシャントレイル」のコースがかつて海女の活躍した場所だったことから、房州御宿音頭で何か一緒にできることはないかと考えたという。「準備体操として取り入れて、海女文化の歴史を伝えつつ、地元の方と交流する企画を作ってみよう」という試みから企画が生まれた。大会スタッフも地元の人と一緒に練習し、事前に動画を制作し発信するなど、ランナーへの周知も努めた。
開会式終了後、準備体操が始まると法被や衣装の着物を身に着けた同団体メンバーと地元の多くの踊り仲間が月の沙漠記念館前広場に登場し輪を作った。ランナーたちもメンバーの動きを見ながら踊り始め、輪に加わる人もいた。終了後、会場は一体感に包まれ拍手が起こった。
行木さんは「多くの人に房州御宿音頭を踊ってもらえてうれしい。少しでも御宿町や海女の文化について知ってもらえるきっかけになれば」と期待を込める。